将臣・九郎

□幼馴染の特権
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望美はのんびり朝の支度を済ませると、食後のお茶を準備しながらこれからについて思いを馳せた。

「今日はどうしようかなぁ…」

天気は快晴。小春日和とはこういうことを言うのだろう。

予報でも1日晴れ。布団を干すにはうってつけのいい天気だ。


窓を目一杯開け放つ。

「う―ん、気持ちいい!」

ベッドから毛布と布団をベランダに運ぶ。
午後には、ぽかぽかの布団が出来上がっていることだろう。

干していると向かい側の窓が開いた。


「あ、将臣くん!」


「お―、望美」


望美の声に顔を上げた将臣は、寝ぼけ眼のまま片手をあげる。
今起きたばかりだろうということが容易にしれた。

「今起きたの―?!」

「そ―だよ。ったく、朝から元気だな。」

「だってこんなにいい天気でしょ。なんだか嬉しくって」

「良かったな―」


ぱったん。


再び窓が閉められる。
「おやすみ―」という声を聞いた気がして、望美は呆れ混じりに怒りの声をあげた。


「こぉら―!!」


返事はない。



話を放棄して眠りの世界に行ってしまった将臣をたたき起こすべく、ついでに皆がいるかを見に。

望美は有川家へと駆けた。


形式程度のチャイムもそこそこに、勝手知ったる有川家へと望美は足を踏み入れた。

「おはようございま―す」

玄関で声をあげると、顔を見せたのは朔。

「おはよう、望美」

「おはよう朔。お邪魔するね。皆は?」

「皆思い思いに出かけたみたい。私はまだ片付けが残っているから。将臣殿はまだ寝てると思うわ」


予想通りの返答に、望美は苦笑した。

「やっぱり」

「まぁ、将臣殿らしいといえばらしいわね」


くすくす、と笑う雰囲気は、まるで有川家の母か長女のそれをまとっている。


「どうする?望美」

「う―ん…」


「将臣くんを起こしてくるよ」

「そうね、じゃあそうしてくれる?」

「うん!お邪魔しま―す」


靴を脱いで家にあがると、勝手しったるといった様子で望美は階上へとあがっていった。

朔はその様子を微笑ましく見送ってから、自分の仕事へと戻っていく。





「将臣くん!起きてる?」

望美が部屋に乱入すると、案の定ベッドはちょうど一人分盛り上がっていた。

「ま―さ―お―み―く―ん!」

ぽふぽふっ、と掛け布団を叩くと、

「む〜…」

寝言らしきものだけが聞こえてきて、起き出す気配は全くない。


むぅっ、と頬を膨らませた望美は、2、3歩下がって助走をつけた。

たたたっと小走りしてベッドに近寄ると、


「えぃっ!」


ベッドの上に飛び乗った。

正確に、ベッドの盛り上がった部分――将臣が居そうなところをめがけて。


「ぐゎっ!?」


布団の中から、くぐもった悲鳴があがった。

「起きた?」



「…寝てろ!」

「きゃっ!?」

寝おきの不機嫌そうな声に意地悪さを滲ませて、将臣は被っていた毛布で上に乗った望美を巻き込んでしまう。

「くるしい〜〜っ」

丸めた毛布のなかに包まれた望美は、暴れようにも身動きがとれない。

しかもそのまま反転させられて、簀巻き状態の望美の上に、将臣がずしりと被さってきた。


「ま、将臣くん!?」

僅かに毛布から顔を出した望美。

視界に入ったのは、瞳を猫のように柔らかく細めた将臣が、にやにやと悪戯っ子の笑みを浮かべている様子だった。

「お―、望美」

「おぅ、じゃないよ!動けないから!出して―!」

「嫌だ」

「嫌だ、って…」

「休みぐらい休もうぜ」

視線は望美の目と逢わせたまま、将臣は望美をくるむ毛布の上に己の上半身を預ける。

「〜〜もうっ…」

その真っ直ぐな瞳も、感じる重みも、毛布越しに感じる体温も。

間近に互いに互いを感じ、それにもかかわらずストイックな距離関係。


久しぶりに「八葉」ではなく「幼なじみ」に戻った気がした望美は、将臣の体温を感じながら、優しい休息に吐息を漏らした。




END









将臣編EDでした。


うだうだしてればいいよ!(笑)可愛いから。

幼なじみだからこそ、「一緒に眠る」とか躊躇なく出来るんじゃないかなあと思い。
選択肢もなにも、部屋から出ないのかよ、という(笑)

まぁ、妥当EDということで。

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