ネタ
□安心する場所
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★37 気付かないのは当人達だけ
遠出をした帰り道。
望美は白龍と連れ添って、夕日のさし込む鈍行列車に乗っていた。
人気も少なく、話し声もまばらな車内では、かたんかたん……と規則正しいレール音が響いて聞こえてくる。
「神子、楽しかった?」
隣に腰掛けていた白龍が、望美を見て首を傾げた。
さすがに暑いのか、長い空色の髪を後ろで一つに結わえてはいるものの、結わえ損ねられた横髪がさらりと流れる。
「うん、とっても。白龍は?」
「楽しかった。神子が、とても楽しそうにしていたから」
「そっか」
「うん」
大きな姿になったとはいえ、小さい頃見た純粋な笑顔はちっとも変わらない。
甘い微笑みが加わったぶん、望美がドキドキすることが増えたけれど。
力いっぱい遊び尽くした2人は心地よい疲れに包まれていて、手をついだままぼんやりと座っていた。
が、そのうち、
「………」
不意に肩に重みを感じて、望美は目を丸くした。
「は、白龍?」
「………すう………」
どうやら、疲れて眠ってしまったらしい。
離れたくないと子供がねだるように、手は繋いだまま、頭を望美の肩に預け、白龍はすやすやと規則正しい呼吸を続けていた。
「疲れちゃったのかな」
望美はそっと白龍の顔をのぞき込んだ。
無邪気そうな澄んだ瞳が瞼の裏に隠れているものの、端正な顔立ちや女の子にも負けない白磁の肌は白龍の美しさを損なうどころかますます引き立たせている。
(相変わらず、神がかった綺麗さだよね……)
長い睫を羨ましく見つめながら、望美はほうと溜め息をついた。
寄りかかってくるからといって、払うのも可哀想だし起こしてしまうのも忍びない。
(仕方ないな)
望美はふっと小さく笑みを漏らすと、寄りかかってくる白龍をそのままに、自分も眠りに落ちていったのだった。
END
……目の前でコレやられると、見てる側はひじょ―に厳しいものがありますが!(爆)
副題はそういう想いでつけておきました(^_^;)
白龍ならいいや―と思って書いちゃいました。でも小さい白龍だと厳しい感が出ないので、
「白龍……うん、白龍なら許せるけど大きい白龍かぁ……電車で……うん!」
みたいな感慨(?)を抱いていただければと思います(笑)
20080719