パラレル

□雨の邂逅
1ページ/4ページ


世闇に紛れて、人と言の葉を交わす人外の者たちがいる。
彼らは漆黒を身に纏い、美しい容姿をしていると云われている。

その者たちの名は、俗にこう云われる。



死神、と。




雨の邂逅







「――何処に行くの?」


その質問が自分に向けられていた気がして、望美はふと振り返った。


夜半の帰り道。
駅と住宅街を結ぶこの細い道は、普段は閑散として寂しい。

だが今望美の振り返ったその先には、痩身長躯の男が佇んでいた。


漆黒の衣服に身を包んだその様は、今にも暗闇に溶けてしまいそう。
ただ淡く光る街頭が、男の姿形の輪郭と面立ちを照らし出していた。
柔らかなエメラルド色の髪が光を受けて美しい。


全く見知らぬ人に声をかけられ、普段の望美ならまず警戒しただろう。

だが、穏やかな風貌と人を気遣うような柔らかい口調、そして何より迷い子のように悲しげな双眸が、望美の警戒心を和らげた。


「今、帰り?」

「え、…はい。貴方も、ですか?」

「オレ?…うん、もうすぐ帰るところ」

迷い子の瞳を持つ男は、自分の名を景時、と名乗った。

「途中まで、一緒に行ってもいいかな?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ