パラレル
□雨の邂逅
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世闇に紛れて、人と言の葉を交わす人外の者たちがいる。
彼らは漆黒を身に纏い、美しい容姿をしていると云われている。
その者たちの名は、俗にこう云われる。
死神、と。
雨の邂逅
「――何処に行くの?」
その質問が自分に向けられていた気がして、望美はふと振り返った。
夜半の帰り道。
駅と住宅街を結ぶこの細い道は、普段は閑散として寂しい。
だが今望美の振り返ったその先には、痩身長躯の男が佇んでいた。
漆黒の衣服に身を包んだその様は、今にも暗闇に溶けてしまいそう。
ただ淡く光る街頭が、男の姿形の輪郭と面立ちを照らし出していた。
柔らかなエメラルド色の髪が光を受けて美しい。
全く見知らぬ人に声をかけられ、普段の望美ならまず警戒しただろう。
だが、穏やかな風貌と人を気遣うような柔らかい口調、そして何より迷い子のように悲しげな双眸が、望美の警戒心を和らげた。
「今、帰り?」
「え、…はい。貴方も、ですか?」
「オレ?…うん、もうすぐ帰るところ」
迷い子の瞳を持つ男は、自分の名を景時、と名乗った。
「途中まで、一緒に行ってもいいかな?」