パラレル
□鴻池の犬
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鴻池の犬
〜幼なじみのきずな〜
あるところに、捨てられた3匹の柴犬がおりました。
そのうち蒼い毛並みの1匹が、お金持ちの鴻池さん家に拾われていきます。
数年後。
鴻池さん家に貰われた蒼い柴犬――「まさおみ」はすくすくと育ち、今ではその界隈の大ボスとなっておりました。
日課は縄張りの見回りです。
ある日、まさおみがいつものように見回りをしていると、赤毛の熊野犬が自分より大きい犬をいじめているのに出くわしました。
「こぉら、ひのえ!」
赤毛の熊野犬・ひのえは、まさおみの縄張り内に住むご近所さんです。
まさおみの声に振り返ると、飄々と相対しました。
「やぁ、まさおみ。どうしたんだい?」
「ど―したじゃねぇよ。弱いモノいじめすんな。幾ら小っさくても、お前の方が凶暴なんだから」
「凶暴とは心外だねぇ。それに、コイツは俺たちの縄張りを挨拶もなしに通ろうとしたんだぜ。これぐらいの制裁は当然だろ?」
ちっとも悪びれていないひのえの言葉に、まさおみははぁ、と一つ溜め息をつきました。
心なしか、尻尾がだるそうに垂れています。
ちらりといじめられていた犬を見れば、いじめられてすっかりしょげてしまい、尻尾も耳も垂れきっています。
もとは鮮やかなエメラルド色をしていたであろう毛は薄汚れ、みるからにみすぼらしい野良犬。
義侠心厚いまさおみは、その犬が哀れに思いました。
「弱いモノは労ってやれよ。」
「へいへい」
「お前もお前だ。お前も犬の世界に生きるなら、仁義はきっちり通しとけ」
「はい。…すみません、でした。危ないところをありがとうございました」