小説☆烈火の炎

□くまさん
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くまさん


「ただいまーー!!」
バタンと、ドアをしめる大きな音と共に、紅麗の館に帰ってきたのは、小さい少年。小金井薫だった。彼はそのままリビングを通り過ぎようとするが、いきなり気配もなく現れた何者かに服をつかまれた。雷覇だ。
「っ!!びっくりした〜〜」
そのまま小金井は、雷覇に軽々と持ち上げられてしまう。首もとをつかまれた小金井はまるで小動物のようだ。
「帰ってきてから、まず一番にすることがあるでしょう」
 にこやかな笑顔で、雷覇は小金井のほっぺをつねった。
「手洗いうがい、しましたか?」
「うるさいなぁ、もう」
 母ちゃんみたいに・・、と言おうとした小金井だったが、実の母の優しさを思い出し言葉を呑み込んだ。今では、そんな母親のような優しさをくれる雷覇に、すごく感謝だ。
「今からするよ・・・」
 そういうと小金井は、雷覇の手をぱっと払い、洗面台へ向かう。



 まったく・・・、なんだかペットでもできたみたいですね・・・



 そんなことを考えながら走っていく小金井をみていると、雷覇はあることに気が付いた。急いで小金井のあとを追う。


 洗面台でてをあらっている小金井に追いついた雷覇は、小金井の右腕をつかんだ。
「わっ、なに??」
「肘、どこかでぶつけたんですか?」
 雷覇がつかんでいる小金井の右肘からは、赤い鮮血がしたたっていた。
「ああ・・・、わかんない、木の皮ででも擦ったかな・・・?」
「ここもちゃんと洗ってくださいね」
 雷覇は小金井の肘に、優しく水をかけた。そして、新しいタオルをだし、小金井の肘の怪我にそっとあてる。
「そんなにしなくても、ほっときゃ治るよ・・・」
 そんな優しさがなんだかくすぐったく、小金井はちょっと抗ってみせた。今まであまり受けることのなかった暖かいいたわりが、なんとなくむずがゆい気分にさせる。
「はい、あとは絆創膏・・・っと、あ・・・」
 いつのまにか持ってきていた救急箱をみて、雷覇は少し戸惑ったが、そのまま絆創膏を取り出した。
「これしか今ないんですけど、これでいいですよね」
 有無をいわさず、雷覇は小金井の肘に絆創膏を貼った。
「あ、ありが・・・と」
 確認したいのだが、場所が場所だけに、見えづらい。
「ま、いっか。じゃね、ありがと!」
 礼をつげると、小金井は走って自室へと向かった。

 走り去っていくその右肘では、くまのキャラクターが、絆創膏の中で笑っていた。



Fin

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