小説☆庭球

□寄り道
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夜の国道。真田が運転するセダンの車は対向車線からのライトの光を受けて、黒光りする。大学の寮を抜け出して、夜のドライブにでかけた帰りであった。
静かな車内。カーステレオからながれるラジオも聞き飽き、幸村は助手席で疲れて眠っていた。シートに深くもたれかかり、すぅと寝息をたてながら。
そのまま数分走ると、ふっと幸村の目が開く。
寝ぼけた目が後ろへ飛んでいく景色を窓越しに眺め、夜道に黄色い光をみつけた。

「・・・あ、真田ぁ・・・」
「なんだ幸村、起きたのか」
「うん、ねぇ、ちょっと寄って欲しいところがあるんだけど」
「コンビニか?」
「ううん、そこのブッ○オフ。欲しい本があったの思い出した」
「・・・・あ、ああ」


真田はなめらかに車を駐車場へ滑り込ませると、停車線にそって几帳面に車を停めた。
勢いよく飛び出す幸村。彼はそのまま何も言わずに、店内のある場所へと急ぎ足で向かった。




真田はわかっていた。
彼の趣向。これからの行動。自分がかされる労働まで。
彼に呼ばれるその時まで、真田はスポーツコーナーで剣道の特集雑誌を読みあさっていた。




約一時間後。

「ねぇ、真田ぁ!」

雑誌も読み飽き、とろりと眠たげに目を伏せていた真田の肩を、幸村が軽快に叩いた。

「あ、ああ・・・なんだ?」
「そろそろ帰らない?」
目をこすりながら答える真田に、幸村は無邪気な笑顔をむけた。

「ああ、そうだな」
「それでさ、頼みがあるんだけど・・・」






真田は数十冊の本を抱えてレジへ向かった。
そのままカウンターに下ろし、会計も済ませる。
外に出ると、車の前で幸村は待っていた。


「ありがとvお金はあとで返すね(気が向いたら)」
そういって、羽でも舞いそうな、愛くるしい笑顔をみせる。

「ああ、そうしてくれ。しかしな、何故いつも会計を俺に頼むのだ?」
「えーーー、だって、俺がガンオタだって思われたくないじゃない」
「(・・・変わりに俺がそう思われて・・・)」 
「それに重いしさ」


あっけらかんとそう言い放つと、幸村はそそくさと助手席に乗り込んだ。そしてあくびを一つ。
「ふあ〜眠い、真田きちんと寮まで行ってよね。途中事故ったりとかしたら、殺すよ?」




どこまでも猛進していく王子様に、真田はなすすべもないのであった。
ガンダムアンソロ本と我が儘王子をのせて、
真田の車は帰路につく。

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