小説☆烈火の炎

□夕立ち
2ページ/2ページ



数分後。
空は暗い雲が一面に被さっており、しとしとと雨が降り出してきた。
スーパーのレジを通ったあと、マイバッグにいれてもらった果物に袋をかけながら、
雷覇はスーパーの大きく開いた窓ごしに、空を見つめていた。
「やっぱり降ってきちゃいましたねぇ・・・」
その前には買い物が終わるだろうとタカをくっていたのですが・・・
雷覇は小さくため息をつくと、重たい袋を抱えて、店の出口へと向かった。



ごろごろごろ・・・



外に出ると、雨は予想以上に降っていたようで、どこかから雷の音も聞こえてきた。
「あちゃ・・・、これでは荷物が濡れてしまうかも・・・」
空を見上げて、困った顔をする雷覇。
仕方ないから、荷物だけでもかばいながら、濡れて帰ろうかと彼が思った瞬間。

「ん」
目の前に見たことのある傘が差し出された。
傘の取っ手をにぎっているのが、彼がよく知っている彼の主であった男。
「紅麗様・・・?何故ここに?」
「外で様、はやめないかと言っただろう」
「あ、すみません。しかし、何故ここに?」
雷覇は困惑して、質問を繰り返す。
「いや、急に雨が降ってきたから・・・、雷覇はたしか傘を持っていっていないと思って」
紅麗の頬がほんのり赤くなる。
「たまたま思いたっただけだからな。別に雷覇が出ていったあとずっとそのことを考えていたとか、そういうのではないからな」
雷覇はくすっと微笑むと、わかっていますよ、と優しく答えた。




「でも、なんで傘1本なんです?」
「私がさしてきた」
「ええ、それはわかりますが、では私の傘は?」
「・・・忘れた」
傘を持って誰かを迎えにいくことなど、経験したことのない紅麗は、よぶんに傘を持っていくなどという考えは浮かばなかったのだ。
それを察知して、雷覇は愛しげに微笑んだ。それでも、迎えに来てくれたんですね・・・。
「では、傘がないので、紅麗様の傘にいれていただけますか?」
「うむ」
紅麗は、さした傘を雷覇の方へ掲げる。
雷覇は荷物を抱えながら、その傘の下へと入った。

二人は並んで歩き出す。



案外、紅麗様が傘を1本しかもってこなくて、良かったかもしれない・・・
雷覇は傘を持ってくれている男の腕の暖かさを感じながら、優しく微笑んだ。




fin.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ