小説☆烈火の炎

□大事な宝物
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大事な宝物




「ねぇ。雷覇・・・」
紅麗と小金井が去ってから3ヶ月後。
闘いの余韻はすでになくなり、平和を絵に描いたような日々。
麗も解散し、みなそれぞれに違う仕事をみつけて、新しい生活をしだしていた。
音遠が雷覇を呼び出したのは、そんな平和な休日の午後。

駅に近い商店街の、喫茶店にて。
注文した珈琲がテーブルにたどり着くよりも早く、音遠はきりだした。

「あのね、相談、というか、報告があるの」
音遠は少し顔を赤らめ、目線は泳いでいる。
雷覇はすでに運ばれてきていた水のコップに口をつける。
「なんですか?」
「あのね、3ヶ月間、あの日が来ないのよ・・・」


・・・・・けほっ


5秒くらいの間をあけてから、雷覇はむせた。
頬についた水を、紙ナプキンでぬぐう。
「それって、私に相談することですか?」
心なしか頬が熱をおびてしまう。
自分は音遠と何も関係をもっていないはず・・・と、3ヶ月前の生活を頭に思い浮かべる。
たしかに1泊くらいは同じ部屋で床についたかもしれない、
しかし布団は別だった。自分も何も記憶はないし、音遠も翌日の朝何も言ってこなかった。
そんな間違いは起こりえるはずが・・・

「だから、相談じゃないのよ。報告なの。私妊娠したのよ。」
新しい仕事がみつかったのよ。そのくらいの軽い口振りだった。
つられて雷覇も、へぇ、そうなんですか。と軽く返してしまった。
言ってから、周囲の目を確認する。
私はお父さんじゃないですよ。多分。きっと。
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