Novel(original)
□楽園の花
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主神オルタージュは言った。
――此処は楽園。
仕える妖精たちは告げた。
――癒され、憩い、寛ぎませ。
数多の神々に開かれ、集いの場となりながら、楽園はその存在を永久のものとした。
その象徴は、一輪の花。
主神オルタージュが楽園を造り、その礎にと咲かせた花が、訪うものの目元を和ませ、去っていくものの未練を見送った。
その花の名は秘され、主神以外は知る由もない。
気まぐれに主神へ名を問うても、返ってくる
のは謎めく微笑み。
神々は噂した。
彼の花は、もしや主神が愛したものの化身ではなかろうやと。
妖精どももささやきあう。
彼の花は、未だ来ぬ主神の伴侶に捧げる花ではなかろうやと。
その立ち姿は可憐にして清楚。
凛として他を寄せ付けず、邪を祓い聖を好む。
いつしか名もないその花に、いくつもの通り名がつけられた。
それらは主神の御名をもじったものも多くあったが、主神はそれを咎めはせず、数多くの名を持ったその花をいっそういとおしんだ。
やがて楽園にやってきた翳り。
その翳りのなかにあって、その花は一縷の希望のようでもあった。一方で、その花こそが翳りの元凶だと思う者も現れる。
真実はただ、主神オルタージュの御心にのみ、存在した。
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