Novel(original)

□D
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プロローグ∴∵エピソード1




「…ついてくるか?」
その怯えきった瞳に何をいってもムダとは思いつつ、そんな言葉が口をついてでた。

驚いたように自分を見上げる少女――否、顔立ちはあどけないが、もう女性と言ってもよさそうだが――に、逆に戸惑う。

不安、恐れ、疑問…見慣れたそれらの表情のなかに、微かに窺える、希望、期待――――期待?何に対して、だ?

束の間、自問自答に意識が持っていかれたその間に、少女の目線はまた下がり、うろうろとさ迷っていた。

無言で、背を向ける。去る足音に気付いたのか、少女が再び顔をあげたのがわかった。…わかったところでどうしようもない。

すがるような目、懇願に滲む涙、歪む顔…そのどれも、もう、見飽きた。


ひとつ溜め息を吐く。振り返る。


 その時目にしたものを、俺はきっと、ずっと忘れはしないだろう。





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