小説

□あの頃に戻って。
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「……、」


とりあえずの感想は言葉が出ないくらい驚いた。
双子の片割れが鏡に写したように、自分の髪型になっていたから。
女になった(といっても体はまだ男だけど)アタシと同じような外見が嫌で変えたのに。

その片割れは何事もなく平然としているから、きっと誰かにやられたわけじゃないらしい。
まぁ、やられたとしてもすぐにもとにもどすのだろうけど、



「なによ、その髪型。」

「髪型なんて俺の勝手だろ」


べ、と舌を出して自分の弟は答えた。
アタシのことを嫌がって髪型をかえたくせに、どんな心境の変化かしら。
いくら双子といえど、影州が何考えてるのかちょっと分からないわ。
いつも通りなのに。
ちょっと淋しいと思うアタシはきっと弟離れできないのね。
でもまた同じ光景が見れてちょっと嬉しくも思うわ。



「やっぱりそっちのが似合うわよ」

にっこり笑って影州に言う。
少し驚いた顔をしてこちらを見ている弟はやっぱり弟なんだと思った。
少しだけ顔をそらして、何て言ったらいいのか少し悩んだ後。
目だけこちらに向けた。
ただ、軽く呆れたような表情は丸分かり。



「それ、自分も似合ってるっていいたいのか?」

「あら、似合ってないかしら?」

「え、あー…」


本当にどうしたらいいのか分からない時、よく視線を泳がすのが癖くらい知ってるわ。
受け答えできるようにはなりなさいな。だからいつまでたったもアタシにはまだまだ可愛い弟なのよ。



「なんならずっとその髪型にするといいわよ」


「勘弁。




でもたまにはいいだろ」


あの頃に戻って。
(少しだけ懐かしく、少しだけ微笑んだ)


(懐かしいわね)(あー、うんまぁそうだな)
end

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