ソノタ
□May day
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「遊…戯?」
掠れた声で城之内は呼びかけた.何故目の前に遊戯がいるのか,自分がどこにいるのか,混乱している彼には上手く思い出せなかった.
さっきまで感じていた生々しい恐怖が,城之内を取り込んでいた.体の奥から湧き起こる震えは,押さえようとしても押さえ切れない.膝を抱え,両腕を抱きしめるようにして城之内は大きく息をついた.
隣では遊戯が心配そうに自分を見詰めている.謝罪を口にしようとして,喉が嗄れて上手く喋れない事に気付く.軽く咳こむと「ちょっと待ってて」と言い置いて,遊戯は部屋を出ていった.
窓辺に近づき,カーテンを少し開ける.少しでも,室内を明るくしたかった.一人きりの部屋で月明かりに照らされながら,城之内はゆっくりと記憶を反芻した.
そうだ,今日はバイトが終わった後,遊戯の家に泊りがけで遊びに来ていたのだ.散々遊んで,遊び疲れて,いつの間にか眠ってしまった遊戯の隣に横になり―
あの夢を見た.
ぞくり,と悪寒が走った.蠢く闇のイメージは鮮明で,城之内は知らずに身を震わせる.