テキはどこだ

□GLAMOROUS SKY
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【GLAMOROUS SKY】

 昨夜変えたばかりの着メロが鳴り響く。モニターに記された名前を見て、ビアンキは思いっきり渋い顔をした。
「今からママンとお茶の時間なの。言っておくけど、掛け直してきたら千紫毒万紅だから」
 エロ医者が自分の名を連呼するのをあっさり無視してぶっちり通話を打ち切る(「そんなぁ、ビアンキちゃん、ビア」)。それでも気が済まず眉間に皺を寄せて待受画面を睨み付けていると、クスクスと笑う奈々の声が聞こえてきた。
「ビアンキちゃん、すごい顔。でもそんな顔すると、獄寺君そっくりだわぁ。」
 やっぱり兄弟なのね、と続けながらビアンキの前にコーヒーとロールケーキを並べる。
 普段あのコはどんな表情で生活しているのだろう。愛する弟は自分に会うと極端に照れて逃げ出してしまうから、それを確かめる機会はあまりない。だから、似てると言われたのは顰め面なのに、少し嬉しくなって、ビアンキは微笑んだ。
「そういえばビアンキちゃん、着メロ変えたのね」
自分のコーヒーを運びながら奈々が指摘した。
 ビアンキの着メロは今までアヴリルなんかが定番で、邦楽が使われた事がない。
 だから、変わった時すぐ気付いたのよ。奈々はケーキを口に運びながら少し自慢げに言う。
 ビアンキは携帯を手に取り、メロディを再生した。電子音のBGMが流れる。
「この曲は特別なの」
怪訝そうに自分を見る奈々に向けて笑う。
「だって歌ってるコ、ママンと同じ名前でしょ」
いつも一緒に居れる気がするわ。そう言ってコーヒーを口に含むと、奈々はぽっと赤くなる。そんな彼女を見つめて、ビアンキはまた、微笑んだ。
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