テキはどこだ

□bentornato
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9代目に報告を終え、煩雑な手続きを済ませて。
そうしたら「我が祖国」とはしばしオサラバだ。

【bentornato】


 彼の国と行き来するのに大した荷物など必要無い。まるで日帰りのような身軽さで、獄寺は駅に降り立った。
 イタリアにいる間も、飛行機の中でも、胸に浮かぶは敬愛する10代目の姿。
 ―オレがいない間に妙な輩に絡まれたりしていないだろうか。
 そう思ったら心配で居ても立ってもいられずに。獄寺は走り出していた。

「うわ、すごい…!」
 広がる夕映えに、綱吉は思わず呟いた。
 東の空は藍色に沈み、見上げる天心は遠い紫。そこからグラデーションを描きながら西の薄紅へ。
 見飽きる事の無い彩りは、けれど僅かな合間に闇に沈んでしまう。だからこそ、綱吉はこの空を見上げるのが好きだった。
 しばらく空を眺めて、そろそろ帰らなきゃな、と手に持った買い物袋(中身は奈々に頼まれた玉葱と牛乳だ)を持ち直した時。正面を向いた目が、夕陽を背に立つシルエットを捕えた。
「10代目〜〜!」
 げ、帰って来たんだ。などと思う間も無く。息を切らして駆けてくるのは先日より自分の「部下」になったらしい転校生だ。
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