キラめく雨滴

□ゴンドラの唄
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 誰にも言わなかったけど、最初はあんまり好きじゃなかった。
運動神経バツグンで、いつも笑ってて。誰からも好かれてるのにどうして。
 自分でも不思議だったけれど。

―その心に、誰かが棲む事はないの?
 ずっと、そう聞いてみたかった。


〈ゴンドラの唄〉
明日から夏休み。梅雨も明け、期末テストも終り。大量の宿題や通知表からはひとまず目をそらして、楽しい夏の始まりに心弾ませる、そんな日。

笹川京子は、恋に落ちた。

馬鹿みたいに暑い夏空の下、無駄に長かった終業式が終わる。
「あ〜、やっと終わったよ。校長のヤツ、話長すぎ!」
長い黒髪を鬱陶しそうにかきあげながら花が吐き捨てる。
 確かに今日の校長先生の話も長かった。彼の話の間に何人の生徒が倒れたか。思い返して京子も苦笑してしまう。
「あ、山本君」
「わぁ〜、獄寺君もいる!」
 他の学年やクラスの女子が小声で騒ぎ始めた。その声につられて何気なく流した視線が、「彼」に捕まった。
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