Text

□いつだって
1ページ/4ページ



「ね、アレンくん。後で私の部屋で会わない?」
「あれ。仕事はいいんですか?」
「うん。だってせっかくお互い本部にいるんだし・・」
ね、そう言ってリナリーは頬を染めて笑った。







「リナリー。僕です」
ノックの後でドア越しに伝える。
ガチャ、と程なく開いたドアからぷくっと頬を膨らませた彼女が顔を覗かせた。
「アレンくん。遅かったじゃない、何してたの?」
「すみません。これ、お詫びに」
ぽん、と紙袋を手渡す。すでに香ばしい香りが漂っている。
中身は彼女の好きな、とろける程にやわらかいガトーショコラ。
「わぁ!ありがとう。ね、もしかしてこれ・・」
「僕が作ったんです。大急ぎでしたんで簡単なやつですけど」
にこりと笑う。
確かに遅れてきた彼に怒ってはいたが、理由が自分の為ならば話は別だ。
それどころか、待たされた分余計に嬉しいのが本音。
「アレンくん、器用だもんね。すごくおいしそう」
ありがとう、と再び言って彼女は幸せそうに笑った。



リナリーの部屋に誘われた時は、いつも甘いものを持ってくるのがアレンの習慣になっていた。
今日の様に任務から帰った後は特にだ。
彼女が好きだから、というのは一番の理由だけれど・・





「んー」
アレンはベッドの腰掛けてから両手を上に思い切り伸ばし、伸びをした。
「っは」
息を吐いてそのまま後ろに倒れこむ。
普段は大人びた所のある彼のそんな様子に、リナリーはくすくすと笑った。
「やっぱりまだ、疲れてる?」
「はは・・少し。それより戻って来たんだなと思って」
「うん。今回の任務、ちょっと長かったもんね」
お疲れ様、と彼の隣に腰をおろし手を伸ばして彼の額を撫でる。
彼がありのままに、帰って来たことをここで感じてくれるのは嬉しい。
気持ち良さそうに眼を瞑った彼の甘える様なしぐさに胸がとくんと跳ねた。
面倒見がいいせいなのか、そんな風にされるとどうしても弱い。普段は見せない分、尚更だ。

そっとアレンの隣りに寝転んで近くから彼の横顔を見つめた。
いつの間にか大人っぽくなった顔つきにどきりとしながら彼の頬に触れた。
「アレン、くん」
小さな声で呼んでみる。
途端に抑えていた分どうしようもなく愛しくて、未だ目を瞑ったままの彼に近寄り頬に口づけた。
じゃれつく様に彼に擦り寄る。
くすぐったそうに笑った彼が眼を開いて至近距離から彼女を見つめた。


いつもそう。胸が高鳴り、熱くなる


知ってか知らずか。
にやり、とアレンが小さく笑った。


                     
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ