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□夢を見よう
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夜の闇の中で流れる灰色雲。
それによって見え隠れする満月といくつかの星。

全てが寝静まっているような静けさの中、アレンは耳をそれらに傾けた。
時おり聞こえるのは何かの爆ぜるような音、足音にも似た僅かにに軋む音。
そして胸元で眠る彼女の微かな寝息。



−行かなくては、ならない



アレンはそっと彼に擦り寄るように眠るリナリーを覗き見た。
穏やかな寝顔。
満たされ、疲れ果て、安心しきって眠っている。そんな顔を彼女が見せるのは彼だけだろう。

いつからこういう風になったのか、はっきりとは憶えていない。
彼が弱く、頼りなかった頃に彼女は強く、優しかった。
当然の様に引かれ合い、求め、想いを重ねた。
何度となく同じ夜を共に過ごしても、飽きることはなかった。
それどころかその都度深まっていく、縁。
底なしの欲望に体を沈め、何度も貪った。




アレンは体をそっとずらした。
「ん・・」
小さく声を上げ彼女が身じろぐ。
長い睫毛が、目覚めようと微かに揺れた。
彼は子供にするように彼女の背中を優しくさすってやった。
次第に、開きかけていた瞳が静かになった。
その手の存在に安心したかのように、再び彼女は小さく寝息をもらしはじめる。
安らかに眠る彼女の額に、アレンはそっと口づけた。



 夢を見て、リナリー。
 君が目覚める頃には僕がその夢を叶えるから



アレンはするりとベッドから抜け出した。


                
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