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□繋がり
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「ねぇ、アレンくん」
リナリーが話しかけるとアレンはなんですか、と彼女を見た。
「・・アニタさんて、キレイな人ね」



アニタの店に着いた頃にはすでに夜だった。
明日からの船の準備に備え、アレン達は彼女の店に滞在している。
リナリーは先程までのアニタとの対談を思い出していたのだ。
彼はふと、何かを考えるような素振りを見せたがそれは一瞬。
「そうですね、全くなんであんな綺麗な人達が師匠の愛人なんてやってるのか僕にはさっぱり分かりませんよ」
うんざり顔で、ちらりとティムキャンピーを見やる。
ちっちゃなゴーレム。
まぁ、彼に罪はないのだが。


アニタの店は周りを水路で囲まれており、開いた窓から見下ろすと店の照明を反射して
爛々と水面を照らしている。
す、と夜空を見上げると三日月が少しおぼろげに浮かんでいた。
−−彼は綺麗な人たちが、と言った。
「そんなに、いるんだ」
少し驚きつつ、彼女は視線を再び水面に戻した。
さっきまでの場面がフラッシュバックする。



決して長い対談ではなかった。
すぐに話し始めたアニタはクロスの行方を告げたのだから。
誰もが一瞬諦めかけた時にアレンは1人クロスの行き先を聞いた。
キレイな光を目に宿し、そんな事で僕の師匠は沈まないと言って。
彼の言葉に張り詰めたていたものが解けたかの様なアニタに真っ直ぐな眼を向けて。


リナリーは小さくため息をついた。
今度は目線を他の見せ店へと向けた。
一帯が派手に色とりどりに輝いている。
アニタと分かれ部屋に案内される場面に意識が移った。
皆が歩き出した時、彼は1人そっとアニタへと歩みよった。
他の仲間は誰1人気づいていない。
彼はアニタに小さな声で何かを言うと、再度あの眼差しで彼女を見た。
一時、2人で見つめ合う。
より強く輝いたアニタの瞳。
そして浮かんだ愛しげな微笑み。



                   
              


                 
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