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□とある朝
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− コン コン



ドアをノックする音に眼を覚まされる。ひどく眠い。
昨夜遅くまで起きていたせいだろう。
薄く眼を開けてみる、まだ早い時間らしい。
窓からはようやく日が射してきた様な、独特の薄い白い光が差し込んでいる。
一瞬、居眠りしようかと迷う。しかし、任務だったら・・
もぞ、と何か気遣う様に起き上がった瞬間、先程よりも強くノックされた。
「おーい、アレンいるんだろ?」
更にどんどんと叩く。


(任務じゃないだろうな、どうせ)


はぁ、とため息をつくとズボンをはき軽くシャツを羽織ってノブに手を掛けた。
開ける前に少し見回して、とある事を確認する。


(大丈夫か)


とようやくノブを回した。



「何ですか、ラビ?」
その赤毛の青年を部屋に入れる気は毛頭ない。
軽く後ろ手にドアを閉め、アレンは教団内の自室から出た。
「これ、リナリーに渡してくんねぇ?」
小さな箱を眼の高さに持ち上げる。
「何ですか、これ?」
言いつつ受け取る。
同時にしまったと少し後悔するが、もうすでに遅い様だ。
ニカッとラビは笑って、箱をポンと叩いた。
「コムイに頼まれたんさ」
続けてドアに隙間を見つけて中を覗き込む。
「んー察するとこ、リナリーはまだ寝てるんか?」
と片手を額の上にやる。眼に見える範囲には何もない、が
「ラビ!」
アレンは隙間の前に立ちはだかり止めた。
「ははは。冗談さー怖ぇ顔すんなって」
いかにも楽しげに笑う。
「まぁとにかくそれ、頼んださ」
そうと告げるとじゃあなーと後ろ手を振り、再び笑いながら彼は去って行った。



まったく、すぐ人をからかおうとする。
はぁ、と小さく息をつきアレンは室内に戻った。
ベッドを見やり彼は苦笑を漏らした。

思った通りだ。

元々、リナリーは眠りが浅い方である。
衣服が床に落ちている為シーツに体を包み込んでいるが、先程の会話が全部聞こえていたのだろう。
真っ赤な顔を隠す様に腕の中に沈めている。



(これ言ったら余計赤くなるだろうなぁ)



思い浮かんだ事は口にせず、彼は床の衣服を拾い上げた。
彼女はひどく恥ずかしがりだ。
そんな姿もかわいくてもっと見たいと思うのだが、あまり過ぎると悪さをしている様で僅かに気が引ける。
ようやく少し顔を上げた彼女にくすりと微笑むと、

「リナリー、おはよう」

彼女の口元にちゅ、と軽くキスをした。




                 
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