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□五万ヒットお礼小説・将臣編
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《未来予想図―将臣―》


決めている事がある。


ザザ…ン。
「寒…」
冬の海は、やはり寒い。クラッシュジ―ンズのポケットに両手を突っ込み、俺は首を竦めながら鎌倉の海を眺めていた。
(もう一度、この海を見る事が出来るなんてな)
元の世界に戻り、早二月。何度も足を運んじゃいるが来る度にしみじみと思う。
「…」
諦めるよりも、信じる事の厳しさを幾度噛み締めただろう。目を細める。元の世界に帰る事。望美を捜し出す事。希望を捨てずに生き抜く事が、あれ程難しいだなんて。
サクッ。
ピクリ、と微かな足音に体が反応した。サク、サクと近付く砂浜を歩く音。
「…将臣君」
声を聞く前から、その気配で誰が来たのかなんて分かっていた。ふと苦笑する。この体はもう、還内府を名乗っていた頃とは違うといのに。
「三十分遅刻だぞ、望美」
振り向かずに茶々を入れると、ふわりと柔らかく背後から抱きつかれた。
「おいこら」
「ふふ」
御免なさい。笑いを滲ませた声で謝罪され、俺はふっと笑みを零した。
「許可、出たよ」
「あ?」
何がだ?背中の望美を振り向くと、少しだけ頬を赤くした望美が俺を見上げていた。
「同棲」
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