マナケミア
□イライラと嫉妬
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「ねぇねぇ、あの人カッコよくない?」
「あ!ホントだー!」
調合の材料の買い出しに学園の校庭へロゼとリリアの二人で来てみると、名前も知らない女子生徒がロゼを見て黄色い声を上げていた
「お嬢様?」
「…何でもないわ」
ちやほやされているロゼ本人はその女子生徒の会話を全く聞いておらず不機嫌そうになったリリアの顔を覗いてきた
勿論、リリアが不機嫌な理由は…
ロゼがカッコイイのは知ってるが貴女達には関わってほしくないというライバル心から来る物だ
「…ロゼがカッコイイのは当たり前でしょ…」
隣にいるロゼにすら聞こえないような小さな声でぼやく
…そう、ロゼがカッコイイのはアルレビス学園に入学するよりもっと前から…
幼少の頃からリリアは知っている
「…お嬢様?どうかしたんですか?」
「何でもないわ」
心配そうにロゼが再び顔色を伺ってくる
…ふと、不機嫌そうな顔ばかりしていてもロゼに好かれないだろうと思ったがなかなかこのイライラした気持ちは収まらなかった
「せっかく二人きりで買い出しなのに…」
またロゼに聞こえないくらいの音量で呟く
今はエトもぷによもウィムもいない
最初は気分がとても良かったのに今は最悪だ
「お嬢様」
「な、なにかしら…」
不意にロゼが真面目な顔をしてリリアを見つめてきた
リリアにとってはそれだけで心臓の音が高まるには十分だ
「今のオレは…お嬢様以外の女性の事なんか全く気にしてませんよ?」
「え!?」
ロゼが、そんな事を言ってくれるとは全く思ってもいなかった
いざという時しか気を効かせた言葉をかけてくれないし、普段は無愛想気味なロゼが、だ
ここで更に甘い言葉でもかけてくれたら絶対にリリアは骨抜きになってしまう
でも、期待せずにはいられない
「お嬢様が隣にいるのに他の女性に目をやったら殴られますし」
「な、なんですって!?」
しかしせっかくの期待はデリカシーの欠片もない台詞で終えてしまった
更には買い出しもいつの間にやら終わり、当たり前のように荷物持ちのロゼはリリアを置いて先に歩きだそうとする
待ちなさい!と大きな声でロゼを呼び止めようとしたらロゼの呟きが聞こえてきた
「さっきからボヤキが聞こえてきてるんだよな…」
その言葉を聞き不意に恥ずかしくなったが貴方のも聞こえてるわよ、と思うと口元の緩みが収まらなくなってきた
もう、不機嫌なリリアの姿は見当たらない
「待ちなさいロゼ!主を置いて先に行かないの!」
結局はいつも通りの風景だが…
少し、内面は深まった気がした
→あとがき