どうでもいいこと。

□「いかにしてPCは彼ららしく動いているか」の考察
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「いかにしてPCは彼ららしく動いているか」の考察







宿の冒険者に思い入れのあるプレイヤーの中で人気を集める「PCがよく喋るシナリオ」。
私自身もそのジャンルのシナリオのファンの一人である。

今回は、PCがよく喋るシナリオにおいて、いかにしてPCを魅力的に動かしているのかを私なりに考察していきたいと思う。

PCを魅力的に動かすにあたって、どのPCがどのセリフを話すか、の選択は重要である。
そこで、どのような方法で話者選択されているのかを、私が今までプレイしてきた「PCが活躍するシナリオ」を見返していくつかに分類し、その利点と問題点について述べたいと思う。

1、 手動選択+断定的役割付け
この手法が印象的なシナリオ例:カリン様作「見知らぬ仲間」
               SIG様作「マールの火竜」

この手法は、まずreadmeなりシナリオ内なりで「この役割はこういう性格の設定で作っています」という旨を記してプレイヤーにどの役割をどのPCに担当させるか選択させ、そのPCにシナリオ内で決められた役割と性格を貫いて貰うというものである。
この方法の利点は、断定的な役割付けによってキャラ付けがはっきりするため、それぞれのPCを活躍させやすい点である。作者の描きやすいキャラ設定が付けられることから、魅力的に描くことができる可能性も必然的に高くなる。
また、プレイヤーに役割を手動で選んでもらうことにより、PCがプレイヤーのイメージと異なる動きをしてしまうリスクも抑えられる。
しかし、そもそもシナリオ内の役割がプレイヤーの好みに合わない場合は、プレイを敬遠されてしまうのが難点である。また、逆にPCの役割に全くこだわりのないプレイヤーからすると、いちいち役割を手動で選択しなければならないのは手間に感じるかもしれない(手動選択はキャンセルすれば大体はランダムで選択してくれるように作られているが)。

2、自動選択+断定的役割付け
この手法が印象的なシナリオ例:匿名希望の入沢様作「妖刀 紫苑」
               ABC様作「アゼリナを翔る者達」

こちらは1と違い、役割や性格の選択をPCの所持クーポンで自動判別してからその役割を貫いて貰おうという手法である。
この「自動判別」というものもかなり奥が深く、様々なシステムが存在しているが、今回は一纏めにして考察させていただく。
この方法の利点は、PCがプレイヤーに動かされているのではなく、自ら性格に沿って動いているように感じられる点だろう。また、どのような役割があるかを隠しておけるため、プレイヤーの意表を突くような役割を与えることも可能である。
しかし、この方法はリスクが高い。クーポンがプレイヤーの想定外の拾われ方をし、PCがプレイヤーのイメージからかけ離れた動きをしてしまう可能性は少なくない。
自動選択のメリットを生かしたままリスクを軽減させる方法は、役割又は性格を多めに用意しておくこと位だろうか。
役割が上手くPCにはまれば非常に喜ばれるシナリオになると思われるが、ギャンブル性の高い手法である。

3、自動選択+手動選択+断定的役割付け
この手法が印象的なシナリオ例:jim様作「黒い花の香」
               絹越木綿様、ラ・フランス様、七篠権兵衛様作「ネクロポリス」

この方法は、名前の通り上記の2つを複合させたものである。最初に自動判別によってPCに役割を配布した上で、手動で役割の修正を可能にしている。
利点は、自動判別でのPCがイメージ外の行動をとる現象を未然に防げ、かつ役割を自分で設定するのが面倒な方や、PCにクーポンに従って自由に動いて貰いたい!という方に手動設定なしで遊んで貰える点である。
ただし、ネタバレにつながる役割を設定しづらい点や、折角組んだ自動設定が使われずに終わる可能性があるなどの若干の難点も挙げられる。あと普通は一番手間がかかる。
しかしながら、沢山の人にストレスなく遊んでもらいたい場合には一番安定した手法だろう。

4、その場でのクーポン判別
この手法が印象的なシナリオ例:ヒロタ様作「B.U.Gallery」
               柚子様作「砂を駆る風となれ」

こちらは前3つと大きく違い、役割での性格付けを最低限に抑えておいた上で、会話シーンの際に所持クーポンに応じて台詞を言わせる手法である。
細かく分けると、とある台詞を言わせる際に一番ふさわしそうなPCを選ぶPC選択型と、とあるPCに台詞を言わせる際に所持クーポンによって話す内容を変化させる台詞選択型があるが、やっていることはあまり変わらないため同じ分類としておく。
この方法では、一括した性格付けに比べてキャラ付けは曖昧になるものの、様々なタイプのPCに対応できるのが利点だ。戦士、参謀などの役割で話者を選ぶのではなく、_猪突猛進、_穏健などのクーポンで台詞を言わせることで、大人しい戦士と行動派な参謀、などといったパーティにも対応することができるのである。
更にこの方法は簡単に導入できるという利点もあるため、前3つの手法をとっているシナリオでも用いられることは多い。
問題点を挙げるならば、その場その場で話者選択するため、相反するようなクーポンを一人で持っているPCがいる場合に発言に矛盾が生じる可能性のあることや、複数のPCが言い争うシーンなどを作る際には話すPCが被らない工夫が必要なことである。
パーティが個別行動をしている場面などに使うのが最も効果的な手法だろう。


と、いうわけで4つほどに手法を分けてみたが、改めて様々なシナリオの中身を拝見してみると、こんな大まかな分類には収まりきらないような工夫がそれぞれのシナリオになされていた。
今回は話者選択のシステムに絞って考察を行ったが、他にも口調対応や一人称、関係クーポンへの対応などの部分を作りこんでいるシナリオも多く、また物語や描写の巧みさや、探索や戦闘での達成感を作りだすことももちろん魅力的なPCの演出に大きく関わってくる。

改めて素敵シナリオの作者様方に感謝と尊敬の念を抱きつつ、この考察が少しでもシナリオを作ってみたいという方のお役に立てることを祈るばかりである。






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