短編集

□くらっぷ!
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ぽちゃん、ぽちゃんと、液体の跳ねる音がした。五つ会った角砂糖は、今は二つに減っている。



「うむ、美味い」



幸村が言った。
彼は甘い物を好むけど、自分はそうではない。
テーブルの上に置かれた角砂糖も、自分が入れるからではなく、たまに量を増やす彼のためにある。



「……一緒に飲まぬのか?」



彼がそう言った。
キッチンに立って、紅茶と一緒に食べようと思っていたケーキを用意していた私は、その言葉に振り返る。



「今、ケーキを用意するから、もうちょっと待って」



再びキッチンの方に向かって、フォークを取り出そうとした時、右腕を掴まれ思い切り引き寄せられた。
勿論、幸村の仕業だ。
そのまま彼に力いっぱい抱きしめられ、少々息苦しい。



「……待てぬ」

「幸村?」

「待つことなどできぬ。某の、某の傍にいて下され」



まるで、子供のようだ。
独占欲の強い、子供。

私は、その子供の我が儘に答えるように、背中に手をまわして、キスをした。








角砂糖、三つ


(甘い甘い、至福の時間)

 
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