短編集

□くらっぷ!
5ページ/8ページ


「もしもーし、まだ時間かかりそう?」

「ううん、もうすぐ着くー」



彼女が、俺の家に来ると言い出したので、今日は家で待機中だ。
本当は、彼女の家まで迎えに行こうとしたのだけれど、子供じゃないと拗ねられてしまったので、断念。



(大丈夫かなあ)



一応、俺の家には何回も来ているし、大丈夫だとは思うのだけれど……油断は禁物だ。
何せこの前は、猫一匹いただけで、結果的に道に迷ってしまったのだから。
だから、こうして今、彼女に電話をかけているわけだけど。



「今、どの辺りなの?」

「赤い服の人のところー」



赤い服の人、というのは、すぐ近くの美容院に貼ってあるポスターのことだ。
ということは、もうすぐそこにいるということか。



「良かった。じゃあ早く来てね、心配だからさ」

「うん……うん?」

「え、どうしたの」

「あ、あれ……」








さっきまであそこに、赤い服を着た女の人がいた筈なのに


(ず、頭痛がする……)

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ