短編集
□くらっぷ!
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「もしもーし、まだ時間かかりそう?」
「ううん、もうすぐ着くー」
彼女が、俺の家に来ると言い出したので、今日は家で待機中だ。
本当は、彼女の家まで迎えに行こうとしたのだけれど、子供じゃないと拗ねられてしまったので、断念。
(大丈夫かなあ)
一応、俺の家には何回も来ているし、大丈夫だとは思うのだけれど……油断は禁物だ。
何せこの前は、猫一匹いただけで、結果的に道に迷ってしまったのだから。
だから、こうして今、彼女に電話をかけているわけだけど。
「今、どの辺りなの?」
「赤い服の人のところー」
赤い服の人、というのは、すぐ近くの美容院に貼ってあるポスターのことだ。
ということは、もうすぐそこにいるということか。
「良かった。じゃあ早く来てね、心配だからさ」
「うん……うん?」
「え、どうしたの」
「あ、あれ……」
さっきまであそこに、赤い服を着た女の人がいた筈なのに
(ず、頭痛がする……)