短編集
□くらっぷ!
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「ねえ、だから地図を貸してってば」
「大丈夫、平気なの」
「そうは言ってもねえ……」
休日、11時過ぎぐらいのこと。
彼女の出した作品が、コンクールで入賞したらしいので、二人で見に行こうと遠出をしている真っ最中だ。
駅に着いたあたりまでは、いつもよりもスムーズに行動できていたのだが、そこからが問題だった。
一向に目的地に辿り着かない。
しばらく、彼女が地図とにらめっこしているのを、黙って見ていたのだが……。
さすがに埒が明かないので、地図を渡してもらおうとするものの、中々彼女が折れてくれない。
「頼むって、お願いだから見せてよ」
嫌な予感がするから。
俺が真剣にお願いすると、彼女は渋々だが、持っていた地図を手渡してくれた。
それを受け取り、現在地と目的地を確認すると……。
「……ほらね……」
「え、何が?」
「地図の見方、逆じゃないのー!」
「う、嘘ー!」
「嘘ついてどうするの!ほら、来た道戻るよ!」
おかしい、と思ったら地図が逆さまだった
(やっぱり、としか言いようがなくて)