短編集
□くらっぷ!
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「すみません、遅れました」
その日、彼女は遅刻してきた。
いつもは一緒に登校してるのだけれど、今日に限って日直だったから、今朝は別々に登校していたのだ。
さすがに、通いなれた道で迷ったとは考えられないし、具合でも悪いのかと心配になる。
「今日、どうしたの?」
休み時間になり、俺は彼女にそう訊ねた。
しかし彼女は、しばらくの間微動だにせず、ようやく顔をあげたかと思うと
「可愛い猫がいたの」
訳の分からない返答をしてきた。
何故に猫?
「その猫を、ずっと見てたんだけど……」
「……まさか」
また、嫌な予感がする。
「もしかして、猫を追っかけてたら、道に迷ったわけ?」
「……うん」
(やっぱり……!)
目的地に着くまでの所要時間、75時間と2分
(きっと、一人旅でもさせたらそのぐらいはかかるだろう)