短編集

□くらっぷ!
3ページ/8ページ

「すみません、遅れました」



その日、彼女は遅刻してきた。
いつもは一緒に登校してるのだけれど、今日に限って日直だったから、今朝は別々に登校していたのだ。
さすがに、通いなれた道で迷ったとは考えられないし、具合でも悪いのかと心配になる。



「今日、どうしたの?」



休み時間になり、俺は彼女にそう訊ねた。
しかし彼女は、しばらくの間微動だにせず、ようやく顔をあげたかと思うと



「可愛い猫がいたの」



訳の分からない返答をしてきた。
何故に猫?



「その猫を、ずっと見てたんだけど……」

「……まさか」



また、嫌な予感がする。



「もしかして、猫を追っかけてたら、道に迷ったわけ?」

「……うん」

(やっぱり……!)









目的地に着くまでの所要時間、75時間と2分


(きっと、一人旅でもさせたらそのぐらいはかかるだろう)

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ