OTHERS

□夏祭り
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最初の花火が上がってから、既に1時間近く経とうとしていた。
最初はひとつひとつに感動していたのだが、1時間も続くと飽きてくる。
花火を見上げることも面倒になって、陸は隣にいる彼女の横顔を見た。

隣に座った若菜の横顔が、花火の灯りに照らされて見える。
よく飽きないな、と言いたいくらいに、彼女はまだ花火に喜んでいて、
陸はしばらく若菜の横顔を眺めていた。


「…なに?」

やっと視線に気づいたのか、若菜が振り返って首をひねった。

「や、別に…」

夏の夜に映える淡い色の浴衣だったり、薄く紅をのせた頬だったり。

なっさけないことだけど、今日の彼女と上手く目を合わすことが出来ない。


「綺麗だねえ」


手に持っていたうちわでぱたぱたと陸を扇ぎながら若菜がまた花火を見上げた。
言われた陸はもう花火など目にも入っていなかったのだけれど。


「あのさ、小春」

「え?」

「来年も、一緒に来ような」


ドーン・と、大きな花火が上がった。

あちこちから拍手が沸いたけれど、陸も、若菜も、その花火を見てはいなかった。
若菜がまた頬を紅く染め、伏し目がちにはたはたと瞬きをして、嬉しそうに笑った。


「うん、来年も」


繋いだ手をまた強く握りしめて。

ここに誰もいなかったら、思いきり抱きしめてしまえたのに。
そう思いながら、陸も彼女の小さな手を、ぎゅうと握り締めた。



(あと、恥ずかしくて言えなかったけど…)
(なに?)
(今日の小春、すげえ可愛い)
(!…嬉しい、です)


END
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