OTHERS

□人魚姫
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私だけを見て?
わがままだけど・
いつも
思ってしまうよ


―人魚姫―


「筧ー!」


来たっ!

聞きなれた水町君の明るい声に、私は誰よりも反応した。
隣のクラスの水町君は、休み時間の度に筧君に会いにうちのクラスに来る。
本当は私に会いに来てくれてたりしていたら最高なんだけど・なーんて。


「筧、今日ヒマ?!」
「部活がある」
「んはっ!そりゃわかってるさァ〜!部活後!」
「…ああ、特に用事はないが」
「恋ヶ浜の女の子達と遊ぶから筧も来いよ!」

「えぇっ?!」

あっ・しまった…!

筧君も水町君も、私を見ていた。
盗み聞きなんて趣味が悪いのはわかってるけど、
気になるし、それに水町君の声が大きいから聞こえちゃうんだもん…。


「なんだ、乙姫も来たい?」


「は…?」

意外な返しに、私はまた素っ頓狂な声をあげた。
水町君はにこにこと笑っている。


誘ってくれたのは嬉しいけど、そういうのじゃなくって…!


「い、行かないよ!」


恋ヶ浜の女の子にちやほやされてる水町君を見たくない。

「…そか、筧は行くよな?」
「行かない」

筧君は呆れ顔で水町君を見ていた。
きっと筧君は、私の想いを知ってる。ううん、筧君だけじゃない。
当の水町君以外はみんな知っているんじゃないかな。

「ケチー!あっ、大平!」

水町君が大平君を見つけて、行ってしまった。
私はそのまま、机の上に突っ伏した。



他校の女の子と遊ぶってことは、私なんて全然眼中にないんだろうなあ…。
こんな片思い・叶う気がしないよ。



(私だけを見て!)


言ったらきっと、
海の泡になってしまいそうね。


(私を好きになって?)


言えるはずのない言葉が、
涙になってこぼれていく。




私はもう、いっぱいいっぱいなの。


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