OTHERS

□意外性
1ページ/2ページ



誠実
優しい
暖かい

好きになる人の条件に
ひとつも当てはまらない人


―蛭魔妖一―


それは・「ある日」のこと。


「おい、糞マネ」

「何?」

「これ、まとめとけ」


そう言って「ヤツ」は、大量の資料を私に向かって差し出した。
その細い腕でよく持てたわね、って・感心するくらいの。


「ちょっと、こんなに…!」

「期限は今日の放課後までだ」

「放課後まで…?!」

「出来ねえ奴には頼まねえ」

「なっ…」

「姉崎、お前だから頼むんだ」


姉崎
お前
糞マネ

奴は使い分けているのでしょうか。

あんな人の口車に乗せられるなんて勘弁!なはずだったんだけどな…。


「…分かったわよ、放課後ね」
「ケケケ、じゃあな」

きっと奴は私が断るわけがないと踏んでいたのでしょう。
特徴的な笑い声をあげると、いつも持っている武器類を肩にかけて、部室を出て行ってしまった。


「…やるしかない」


今はまだ朝練の時間。
膨大な量だと言っても、集中してやれば放課後までに終わらない量では無い。
気を引き締めて奴から渡された資料に手をかけた。
そのときだった。

ころん・

と、何かが資料の合間から落ち、床の上に転がった。

「え…これ…」

床の上からこちらを見上げていたそれは、私の大好きなロケット・ベアのストラップだった。
いつか教室で友人たちと騒いでいた・入手困難な限定品。

「なんで…」

なんでこんなところから。
うろたえながら部室を見渡して、ふいに、壁に掛けられたカレンダーに・目が止まってしまった。


11月24日・私の誕生日。


「うそ…」

少し前に奴が出ていった扉を見つめた。


ウソツキ
冷酷
非情・

大嫌いな・はずだったのに、
意外性が・勝ってしまう。


(騙されるな・私!)


%
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ