遙か3

□oasis
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「はいどうぞ」


濡縁に座る景時の横にお茶を置く頼子。
淹れたての証の湯気と共に茶の香りが景時の鼻をくすぐる。


「うん、美味しい」

「良かった」


美味しいと言われ頼子は胸を撫で下ろした。
お茶淹れなどにもやっと慣れてきたところなので、そう言われるのが嬉しいらしい。


「平和ですね」


湯呑みを両手で包み込んで、頼子は感慨深げに呟く。


「朔も黒龍が帰ってきて幸せそうだし」

「そうだね」


今日も幸せそうな顔をして出掛けていった妹を思い出し、景時の頬も自然と緩んでいく。
やはり血を分けた妹の幸せは嬉しいのだろう。


「今までが嘘みたい…」


不意に頼子が呟く。

ついこの間まで戦があったのが嘘に思える程、穏やかな空気に満ちている世界。
だが頼子の横に座る景時は険しい表情をしている。

 

「俺なんかがこんな幸せでいいのかな」


そう言う景時の横顔は切なそうで、頼子は胸を締め付けられる感覚に陥る。


「皆を裏切ろうとした俺なんかが…」


声を絞り出す様に言う景時の手に頼子はそっと触れる。
その手は声と同様に小刻みに震えていた。

 
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