遙か3
□静寂の離
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「頼子さん、少し庭に出ませんか?」
広間でぼーっとしている頼子に弁慶が声をかけた。
「良いですよ」
どうせする事も無かったからと、弁慶と共に庭に出る。
「紅葉か…綺麗ですね」
庭には美しく色付いた木々が素晴らしい紅葉を見せてくれていた。
気温の低い奥州ではもう始まっていたらしい。
「京より時期が早いですね」
「ええ。三日ほど前に少し色付いて、あっという間でした」
頭上を見つめながら二人はゆっくり会話をする。
そんな時、風で舞い上がった木の葉が頼子の髪に乗る。
「まるで簪のようですね」
「何がです?」
訳が分からず頼子が聞き返すと、弁慶は微笑みながら頭についた葉を取る。
「朱が髪の色を引き立てていました」
「弁慶さんは口が上手過ぎです」
「軍師ですから」
笑って答える弁慶に頼子は少しだけ納得してしまった。
確かに口下手では謀略など出来ないだろう。
「でも、どっちかって言うと熊野の血だと思いますよ」
「これは手厳しいですね」
くすりと笑いながら言う頼子に弁慶は苦笑する。
そんな中、ふと頼子が庭を見渡しだした。