遙か3

□世界中の誰よりきっと
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「はぁっ…も、無理だよ…重衡さ…」

「頑張って下さい。後少しで終ります」


顔を歪める頼子を励ます重衡。
その表情はどこか楽しそうだ。


「ああっ!いや、苦し、ふぁ…」


びくり、と頼子の体が揺れる。


「お前ら何やってんだよ!」

「着付けです」


将臣の叫びにさらりと答える重衡。


「いや、着付けてないし!帯で内臓潰そうとしてるだけ…」


必死の思いで頼子は言う。

着物はいつも着ているもののままで帯だけ結ぶのは、確かに着付けとは言い難い。


「ほら、後少しですから」

「くあっ!」


甲高い声と共に頼子は思い切り背中をのけ反らせた。


「中々妖艶だな」

「まぁそうだけど…頼子死にそうだぞ」


将臣はため息混じりにそう言うと、頼子の腕を掴む。
そしてそのまま自分の胸に収めようとする。


「将臣殿、何のおつもりですか?」

「見て分かんねぇのか?」


バチバチと火花を散らす2人。
ちなみに頼子は空いている手で帯を緩めようとしている。


「頼子、助けてやろうか?」

「是非そうしてほしいけど、知盛の目が怖いからいい!」

「チッ…」

頼子の拒否に知盛は軽く舌打ちする。

交差しながらそれぞれ睨み合う図は何とも異様な光景だ。



「何をしているんですか…」


呆れた様な声をさせて惟盛登場。


「助けて惟盛!」


男3人の間を抜けて頼子は惟盛の背中に隠れた。
その3人に睨まれている惟盛は困り顔である。


「頼子、訳を話してくれませんか?」

「簡潔に言えば襲われてます!」

「待てこら」


頼子のとんだ一言に将臣は慌ててツッコむ。


「頼子下がっていて下さい。私がどうにかします」

「惟盛…」

惟盛のその言葉に頼子は胸を打たれる。
争いを好まない惟盛のそんな態度が嬉しかったのだろう。


「でもあの3人が相手じゃ…」

「大丈夫ですよ。私だって武門の子ですから」


見つめ合いお互いを心配しあう頼子と惟盛。


「じゃあお願いね!私はちょっと出掛けるから」

「え、頼子?」

あっさり言い、惟盛の問い掛けに耳も貸さずとっとと行ってしまった。

 
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