遙か3

□Flowed away time
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そう言った頼子は今の俺なんかよりずっと大人に見えた。
しっかり人を見ていないと言えないセリフだろう。


「3年あれば少しは変わるさ」


視線を逸し庭を見ながら返す。


「そうだよね。3年もあったんだよね。1年でも充分変わるんだから当然か」


そう言って同じ様に頼子も庭に視線を向けるのを気配で感じる。


「でも人間てここまで変われるもんなのかとも思うけどな」

「ほんと。戦場に立ったりして自分が高校生だったなんて嘘みたいだよ」

「ああ」


あの源頼朝を相手に平家と一緒に戦っているなんて、今でも信じられない。


だけど一番信じられないのは…


「頼子が戦に出てる事かな」


正確には『信じたくない』だろう。


「私限定?!望美だって譲君だって戦出てるじゃん!」


訳が分からないと頼子は反論してきた。

勿論あの2人に対してだってそうは思っている。
だけど望美は白龍の神子、譲は八葉と役割がある。


「頼子は別に神子や八葉じゃないだろ?だから本当は戦う必要なんて無いんじゃねぇか」

「そうかも知れないけど、戦場に立つのが私の存在意義だと思うのよ」
 

どうして頼子はそんな危険な事が存在意義だと言うのか。


「意味分んねぇ」


考えが口をついて思わずキツいものになってしまった。


「何で?何でもない私がここにいるのなんて戦で皆の役に立つ為でしょ。だからそれが存在意義になる」


眩しいくらい真直ぐなその思い。
たった1年でそんな考えを持てるなんて凄過ぎる。

そう思うと同時に、頼子が手の届かない存在になってしまった気がする。


「そうか…」


そう呟いて横にいる頼子の肩を抱き寄せた。
いつも剣を振るっているとは思えないほどそれは細かった。


「なあ頼子、絶対死ぬなよ。約束してくれ」

「うん。だから将臣も死なないで」


口で答える代わるに更に肩を強く抱く。

こいつが戦に出なくて済む世界を早く作る為に戦おう、そう心に強く願って…



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