遙か3

□器用、不器用
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「あ、いたいた。敦盛君、ヒノエ君が呼んでたよ」


敦盛にとって救世主の様にやって来た景時。
その言葉に頼子は渋々ながら解放する。


「ヒノエが…すみません景時殿」

「構わないよー。行っておいで」


ニコニコ笑いながらリビングを出ていく敦盛を見送る景時。
頼子はそんな敦盛の背中を見送りながらため息を一つ零す。


「ヒノエの奴タイミング悪ぃな」

「頼子ちゃん…口悪いよー」


頼子の隣りに腰を下ろし景時は苦笑する。
広いリビングを見渡してみるが、他の仲間は出払っているらしく静かだ。
それを確認すると、景時は意を決して口を開く。


「ねえ頼子ちゃん。俺に髪の毛弄らせてくれない?」

「へ?髪ですか?」


きょとんとした顔で聞き返す頼子に、景時はやはり駄目か、と一人思う。


「構わないですよ」

「本当?!やったー」


思わずガッツポーズを決める景時。


「そんなに喜ばなくても…」

「ごめんねー。でも嬉しくて」


ニコニコと音がしそうな位の笑顔の景時。
どうも子どもっぽい所のある男だと頼子は改めて思う。


「どんな髪型がいいかなー」


櫛で頼子の髪を梳しながら景時は呟く。
滅多に他人に髪をセットされる事の無い頼子は大人しい。


「えっと景時さん…そんな頑張らなくていいですからね?」

「せっかくやるんだから俺頑張っちゃうよ」


言いながら髪を纏めていく景時。
発明が特技なだけあって手先がは器用な景時。
数分もしない内に綺麗で複雑そうな髪型が仕上がった。


「うわ…」

渡された鏡を見て頼子は呆然と声を漏らす。
 
 
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