遙か3

□妙薬、御座います
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「ケホ‥コホ…」


九郎の屋敷の一室、小さな咳の音が響く。


「どうした頼子、風邪でも引いたか?」


湯飲みを机に置き、九郎は目の前の頼子を見る。


「いえ…ケホッ」


否定の言葉を口にしながらも頼子の咳は止まらない。
九郎はそんな妹の様子を心配そうに見つめる。


「兄上ったらそんな心配そうな顔をしなくても」


それに気付いた頼子は苦笑を浮かべる。


「頼子さんを心配しているのは九郎だけじゃないですよ」


今まで黙っていた弁慶が頼子に微笑みかける。
刹那、頼子の眉間に皺が寄った。


「あら弁慶様。いらっしゃいましたの?」

「酷いですね、最初からいましたよ」

「気が付きませんでしたわ」


あからさまに挑戦的な反応をする頼子。
当然いたのは分かっていたが、敢えてそういった態度を取っている。


「そうだ頼子、弁慶に診て貰ったらどうだ?」


そんな頼子の気持ちなど露知らずな兄はそう提案する。


「いえ、弁慶様のお手を煩わせる程ではありませんから」

「しかし一応…」

「大丈夫です。寝てれば治ります」


九郎の意見をピシャリとはね除ける。
それだけ言うと頼子は部屋に行ってしまった。

残された二人は頼子の強情さにため息を吐くより他無かった。
 
 
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