遙か3
□WHITE SILENT EVE
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「寒いですねー」
そう言いながら頼子ちゃんは、マフラーに少し顔を埋める。
今日はクリスマス。
本当は神の御子の誕生日だけど日本では恋人達のイベントだと、頼子ちゃんが苦笑混じりに説明してくれたのは一年前。
「景時さんは胸元が開いてて特に寒そうですね」
「頼子ちゃんも開いてるじゃない」
「私はマフラーしてますもん」
掴んで彼女は自慢げに言う。
マフラーの端についた飾りが風でふわりと揺れる。
「夜になったら急に冷えたね」
「はい。でも寒いと空気が澄んでイルミネーションが綺麗」
そう言って頼子ちゃんは歩道にされたイルミネーションを見つめる。
彼女に倣って辺りを見ると、色とりどりの光が瞬いていた。
そして自分達と同じ様に楽しそうな恋人達。
思わず隣りにいた頼子ちゃんの手を握り締める。
「景時さん?」
「ん?何?」
「何でもないです」
とぼけて見せる俺に彼女は、幸せそうな笑顔を浮かべた。
イルミネーションにも負けない様な眩しい笑顔。
そんな頼子ちゃんの目の前に小さな袋を差し出す。