遙か3
□友人の境界線
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「頼子ー」
昼休みを告げるチャイムが鳴り、隣りの席の将臣が声を掛けてきた。
「それ新発売のやつだろ?」
そう言って将臣が指差したのは、私の机にあるお茶。
「そうだよ。コンビニ寄ったら売ってたの」
「俺も買おうと思った」
なんて言う将臣の視線はお茶に釘付け。
分かりやすい彼にため息を一つ吐いて、ペットボトルを差し出す。
「いいよ、飲んで」
「まじ?サンキューな」
将臣は喜々としてそれを受け取る。
「分かってると思うけど、一口だけだからね」
「ケチ臭いな」
ちゃんと言っておかないと全部飲まれかねない。
「これ旨い」
感想を言う彼を見ると、ペットボトルの中身は半分以上減っていた。
「あー!」
「頼子ちゃん煩い」
飄々と言ってのける将臣からペットボトルを奪い返す。
一瞬でも目を離した自分が憎い。
「将臣最低ー」
「ケチな事を頼子が言うのが悪い」
「私まだ一口も飲んでないのに…」
恨みがましく見てやるが、すまし顔をしている。
文句を言ったところでお茶が返ってくる訳でもなく、諦めて少なくなったそれを飲む。
「飲み口拭くのか?」
軽く指で飲み口を拭った私に将臣が聞いてきた。