遙か3
□oasis
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源平の戦が終結し、怨霊の心配も無くなり平和になった京の町。
そんな平和な京の良く晴れた日、梶原屋敷には楽しげな鼻歌が響いていた。
「ふんふんふんふ〜ん♪」
歌っているのは、屋敷の家長である梶原景時。
彼の鼻歌に合わせて手に持たれた洗濯物が宙を舞う。
「今日は洗濯物が良く乾くなー」
降り注ぐ日差しを見上げ、景時は一人微笑む。
「景時さーん。終わりましたー?」
呼ぶ声に景時が振り返ると頼子がこちらに歩いて来ていた。
「頼子ちゃん。今終わった所だよ」
景時が返事をすると頼子は小さく笑う。
「何だか景時さん物足りなさそう」
「え、そう?」
「まだ洗濯したいって顔に書いてあるもの」
その指摘に景時は軽く頬をかく。
「そうなんだよね。皆帰っちゃったから量が減ってね…」
「そうですよね」
戦が終わり望美達は元いた世界に戻り、他の仲間達もそれぞれの居場所に戻った。
今この屋敷にいるのは頼子、景時、朔だけなのだ。
「じゃあそんな景時さん、お茶でも一杯いかがです?」
少し低めの声音で頼子は決めてみせる。
その調子に景時は思わず笑ってしまう。
「酷い景時さん!」
「ごめんね。でもその誘いは俺からさせて貰えると嬉しいんだけど?」
普段のおどけたものでは無く、低く囁きかける景時。
今度は頼子が笑う番であった。
「何か景時さんには似合わない」
「酷いなー、頑張ったのに」
「でも格好良かったですよ」
頼子の口からさらりと出てきたその一言に景時は赤くなる。
「は、早くお茶にしよう?」
誤魔化す様に景時は頼子を見る。
その仕草に頼子はまた笑みを深くする。
そんな笑みを携えたまま頼子はお茶の準備に向かう。