遙か3
□白銀の地平
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見渡す限り広がる雪原。
その白きものが全ての音を吸い取るかの様に、外界からの音がほとんど聞こえない。
そんな伽羅御所の一室、火鉢を前に頼子はいた。
「寒い…」
呟いて手を擦り合わせる。
あまり物の無い広い部屋に申し訳程度に置かれている火鉢では、さして暖を取れはしない。
「皆楽しくしてるんだろうなー…」
そう言ってみて少し物悲しさを覚える頼子。
ここには苦楽を共にしてきた仲間達はおらず、ただ頼子一人きり。
今ここにいるのは半ば強制的なところもあったが、最後には自分自身で選んだのだから文句は言えない。
「はぁ…」
ごろりと横になり息を吐き出す。
人の話し声の一つも聞こえない事に空虚感だけが増す。
「頼子様、いらっしゃいますか?」
「銀?!いるよ」
慌てて頼子が体を起こすのと同時に銀が障子を開ける。
その瞬間に吹き込んだ寒風に頼子は少しだけ肩を竦める。
「申し訳ございません。ただ今火を取り替えますね」
「ありがと…」
微笑を浮かべる銀から頼子は少しだけ顔を背ける。
銀が火種を入れ替える音だけが響く。