遙か3

□またたび注意報
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「いやー、今日も良い天気だ!」


濡縁で腰に手を当て体を反らす頼子。
いつも寝起きのテンションが低い彼女にしては珍しい事だ。


「おはよう頼子ちゃん」

「おはようございます景時さん」


景時がやって来て挨拶を交わす。

普段と違い下ろされた髪の毛が、彼も寝起きなのを現わしている。


「良い天気だねー」

「本当に。今日も洗濯日和ですね」

「うん」


のほほんと会話をする二人の元に人影が近付く。


「今日の空も美しいが頼子殿には敵わない」

「へ?」


急に聞こえた甘い言葉に頼子は驚く。

別に慣れた話ではあるのだが、いつもと声が違う。


「あ、つ…盛君?」


ギシギシと音を立てそうな雰囲気で首を回す頼子。
景時も驚いた表情をしている。


「そうだ。私の声を忘れるとは頂けないな。それともそうやって私の心を惑わせているのか?」


普段と違い饒舌な敦盛。
それだけでも充分驚けるのに、内容がヒノエか弁慶の様になっている。


「どうかしたか?」

「うん…、本当に敦盛君だよね?」


景時が尋ねると敦盛は微笑む。


「景時殿ともあろうお方は思えない。私を見疑うなど…」


微笑みの美しさはいつもの敦盛なのに、明らかに口調がおかしい。
しかも男女関係無しといった感じだ。


「いつものじれっ隊な敦盛君はどこにいったの?!」


取り乱した頼子が叫ぶ。
その声には若干泣きが入っている。

 
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