遙か3

□好きな貴女の横顔
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熊野水軍の協力を得る為に熊野へとやって来た。

望美達と行動しているからか、随分久し振りに帰って来た気がする。



「どうだい姫君達。熊野は良い所だろう?」


少し胸を張って言ってみる。


「うん!自然がすごい」

「本当に素敵だわ」

「私達の世界じゃ滅多に味わえないよ」


3人とも楽しそうで良かった。
特に望美や頼子は本当に嬉しそうだ。


「ねえ頼子。ちょっと付き合わないかい?」


そう声を掛けると頼子は少しだけ視線を巡らせる。

その視線の先にいたのはあの男。
 

「大丈夫さ。望美達と喋ってるからね」

「そうだね。それにヒノエが誘ってくれたから行くよ」


可愛らしい笑顔の頼子の手を取ってその場を離れる。

一瞬だけあいつから視線を感じたけど、振り返らず歩く。



「どこ行くの?」

「良い場所」


そうとだけ言って口に指を立てる。
明かしてしまったら驚きが半減するからね。


「さあ頼子。少しの間目を瞑って」


素直に目を瞑る頼子の手を握り、目的の場所で手を離す。


「姫君、目をゆっくり開けてごらん」

「すごーい!」

頼子は目を輝かせて景色に見入っている。


「だろ?ここは俺も好きなんだ」


連れてきたのは三段壁。

熊野の海が肌で感じられ、その景色は三本の指に入る程美しいと思う。


「澄んだ深い青が綺麗だね。私のいた世界の海とは、全然違うものみたい」


目を細めて俺を見る頼子。
優しいけど、その目は俺が欲しいものとは違う。

 
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