遙か3

□Flowed away time
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初夏と言えそうな日差しに照らされた庭を見ながら、のろのろと濡れ縁を歩く。

角を曲がった所に見慣れた後ろ姿。


「頼子」


その背中に声を掛ければ長い髪がくるりと動いた。


「お、将臣。将臣も涼みに来たの?」

「まぁ、な」


少し曖昧に返事をする俺に、隣りに座れと床を叩く頼子。
子どもっぽい行動だと苦笑しながら隣りに座る。


「何か複雑な気分だなー」


ふと頼子は俺の顔を見ながらそう言う。


「あ?何が?」

「だって将臣が私より年上になっちゃったんだよ?何か負けた気分になるなー」


肩に手を置いて頼子は盛大にため息を吐く。


「頼子だって望美達よりかは年上だろ」

「でも将臣より年下じゃない!そんな風に見えないのに」


むにゅっと頬を摘まれる。
爪を立てられているから地味に痛い。


「見た目はそうでも女の扱いは遙かに上達したぜ?」


少し妖しげな笑みを浮かべてみせる。


「息子さん使い物にならなくするよ?それに弁慶さんの方が上手いから」


指差しながらそう言ってくる頼子にちょっと恐怖を覚える。


「全く…精神年齢は変わってないんだから」

「そんなもんだろ」


そう、年ばかり取って中身は何も変わってない。

未だに頼子の口から他の男の名前が出るのに堪えられない。
その思いは元の世界にいた時より強くなった気がする。
なにせ今いるここは男の俺から見ても良い男が多い。

だから頼子が誰かを好きになったっておかしくなんてない。


「でも、将臣は本当に良い男になったと思うよ」


にこりと笑いながら言ってきた頼子。


「顔は元から良かったけど、責任感とか考え方とか中身がすごい良くなったと思う」

 
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