捧物・戴物

□晴模様・恋日和
2ページ/7ページ


梶原屋敷の庭には、今日も楽しそうな鼻歌が響いていた。


「今日も精が出ているみたいだな」

「あ、九郎〜」


声を掛けられ、景時は歌っていた鼻歌を止める。
ヘラリとした笑顔に、九郎も無意識のうちに笑顔を浮かべた。


「今日は天気が良いからねー、頑張ってみたんだよ」


そう言われて九郎が洗濯物を見れば、確かにいつもより多い量が干されていた。
それでも景時の足元の籠にはまだまだ洗濯物が入っている。


「これを一人で全部干すつもりか?!」

「うん。やり甲斐ありそうでしょ?」


ニコニコと笑う景時に、九郎は小さなため息を吐いた。
普段着ないような着物まであるので、一人でやるには少しばかり有り得ない量になっている。


「俺も手伝おう」

「九郎が?いいって!折角の休みなんだから休みなよ」


源氏の名代として、八葉として、日夜働いている九郎。
久しぶりにそのどちらも無いので、景時としては彼に休んで欲しかった。


「景時と一緒にいた方が休まるから大丈夫だ」


眩しいくらいの笑顔で、九郎は景時に告げた。
その言葉に少し赤くなりながら、景時は小さく頷く。
 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ