遙か3

□世界中の誰よりきっと
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「惟盛殿のせいで頼子殿に逃げられてしまいましたね」

「せっかくの計画が台無しだな…」

「また見つけ直しかよ」


肩を落とす3人。

実はこの3人、清盛の命で頼子を捕まえようとしていた。
当然頼子はそれを分かっていて惟盛を利用したのだ。

重い沈黙だけがその場を支配した。




「あー、惟盛のお陰で助かった」


市中を歩きながら頼子は呟く。
その雰囲気は鼻歌でも歌い出しそうな勢いである。


「何かお土産買っていこ!」

そう考えついた頼子が店を見て回っていると、にわかに周りが騒がしくなった。


「武士達が…」

「誰か探し…」


周りの人達の話を聞いて、頼子の背中に冷や汗が流れた。


「頼子様!清盛様がお呼びですー!」

「やっぱりー!」


平家の将が束になって走ってきたのだ。
しかも先頭には還内府こと将臣がいる。


「頼むから清盛の買った着物着てやってくれ!」


涙ながらに将臣は言うが、頼子としても言い分がある。


「清盛と同じ金色の着物に蝶の羽根なんて出来るかー!」
「分かるけど!でも頼むって!」

「却下!」


大音量で話す2人だがスピードは全く衰えない。


「頼子様!俺達の体力の為にも着て下さいませ」


平家の将達の心からの叫びが福原の町に響いたのだった。


「こんな事に兵使うなんてさ、そりゃ滅ぼされても仕方ないって」

「まあ言うな。負け惜しみに聞こえるから」

人海戦術により捕まった頼子は、その後暫くそんな事を言っていた…

世界中の誰よりきっと、私が一番平家に困らせられている!



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