贈物文
□3100hitリク!「再確認」
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「嫌ですよ」
「何でさ、二人きりの時くらい良いじゃない?」
「それでも、嫌です」
「こうして肌を合わせる仲なのに」
「何と言われても嫌です」
「七緒ちゃんの、意地っ張り」
「はい、その通りです」
どれだけ懇願しても、七緒は決して譲らない事が一つだけあった。
だから、という訳ではないが、自然と春水も口にしなかった事がある。
「でもさぁ、こう、興が乗ってるときに役職名呼ばれると、結構萎えるんだけど」
「あら?そうなんですか?そう思えませんが」
化粧水を肌に馴染ませ終ると、七緒が春水の入ってる布団にもぐりこんでくる。春水も、掛け布団を上げて七緒を迎え入れる。
「名前呼んでよ」
「嫌です」
七緒が譲らないのは、名前の事だった。
職務中も、私事の時でも、春水を呼ぶときは決まって『京楽隊長』か『隊長』である。
それが春水には当然のことながら不満なのだ。
だから、という訳ではないが、春水も今まで彼女を呼び捨てにしたことがなかった。
今更照れる、という訳でもないのだが、こちらも半分意地のようなものだ。
ひょっとしたら、こちらから先に歩み寄ったら呼んでくれるかもしれないと、淡い期待を抱いた事もあったが、こうして直接懇願しても色よい返事がない辺り、無駄に終わりそうである。
それは、それで負けたような気分になる。