□41000hitリク!「雛祭り」
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 十一番隊はお祭り好きである。

 誰ともなしに、副隊長を祝おうという話になった。折角なので、内緒で事を進め、驚かせようという。
 驚かす筆頭に、ここは隊長を引きずり込むことは不可欠である。
 隊員は揃ってまず、三席と五席に相談し、隊長へと許可を取り付けることにした。

「祭りって、何の祭りだ?」
「ほら、三月三日ですから、桃の節句ですよ」
「…ああ…、人形でも飾るのか?」
「ここで飾ったところで、壊すのが落ちっスよ」
「それに、お雛様には隊長と副隊長がなればいいんですよ」
「……………は?」
 弓親の言葉に、剣八はたっぷり十秒は沈黙し、聞き返した。己の耳を疑ったのだ。
「だって、恋人同士でしょう?副隊長もお内裏様が隊長だと喜びますよ。無論、副隊長には綺麗に着飾っていただいて、お姫様で」
「断る」
 弓親の提案に、剣八は渋い顔を隠さず、きっぱりと断った。
「ほーれ見ろ、やっぱり断られたじゃねぇか」
 一角は剣八の返事が予想通りだったので、弓親に肩を竦めて見せる。
 それでも弓親は諦めない。
 弓親は諦めるつもりは更々なかった。この潤いの全くない十一番隊で、唯一潤せそうな日が桃の節句なのである。例年、やちるは女性死神に誘われて、そちらで雛祭りに参加していた。今年は、剣八が恋人と大手を振っているのである。二人を着飾る絶好の機会なのだ。
「いいえ!隊長!!副隊長に喜んで欲しくないんですか!?可愛く綺麗に着飾った副隊長を、見たくないんですか!?」
 弓親は美には五月蝿い。剣八の微妙な心理の変化に十一番隊で唯一気がついていた男である。やちるから、たくさんの薔薇を見せられ、嬉しそうに報告を受け、心境の変化を知った。
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