100%の嘘
財前
「中途半端な真実なんて必要ないと思うの」
先輩は溜め息混じりにそう呟いて窓辺に寄り掛かった。
「どうせ振られてしまうなら綺麗な嘘で塗り固めて欲しかったよ。100%の嘘でね」
どうやら今回の男に振られた理由は、浮気された挙げ句に浮気相手に本気になってしまったから別れようと告げられたらしい。
「あほくさ、理由なんて何であれ最終的に別れるっちゅう結果は同じやないですか?」
「そんなことないよ!せめてバレないように同時進行でしばらく付き合っといて、部活が忙しいからって理由で次第に疎遠になってフェードアウトみたいな。で、少し間を空けて次の女と付き合い始めたってことにすれば角も立たないワケじゃん?」
彼女の力説に今度は俺が溜め息を吐く番だ。
「恋に浮かれきっとる奴等なんか所詮、単なるバカやし。そんな配慮なんて思い付きもしないやろ」
「そうそう!デリカシーに欠けるのよ。そういう思いやりがないのっ!!」
「まぁ、俺が言いたいんは『先輩も含め』っちゅう意味なんやけど」
「は?あたしが??」
「ヒトの気も知らんと平気で恋愛相談してくる無神経さ」
「あ、え?ご、ごめん……」
先輩の、謝りつつも全く意味が分からないといった様子に苛立って、不覚にも言うつもりのなかった言葉が口をついて出てしまった。
「俺はずっとずっと前から先輩のことが好きやのに」
「えっ?」
意表を突かれた先輩はまるで石にでもなったかのように固まってしまった。
だから俺はトドメを刺してやる。
「あぁ今の話、100%真実っスから」