├NOVEL×遙3(銀髪)

□何も持たず只何も無い時間
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知盛+望美

夕暮には少し早い。が、起床にはかなり遅い時間。
いつもの様にゆるりゆるりと起きて来た知盛は、縁側で呆けている望美を見つけた。

背後からそっと耳元に顔を近づけ
「雨…か。」
と気怠そうに呟く。
そこで初めて知盛が来た事に気が付いた。
「おはよう。…って時間じゃぁないけど」と振り返って望美は静かに微笑む。


知盛はたいてい遅く寝て遅く起きる。
夕暮れ近くまで寝ているという事は珍しい。が、決して稀という程では無い。
笑みを浮かべる望美の瞳に、影を落としている原因にはならないはずだ。


「雨だから手合わせはできないね…。」
「なんだ…?剣を交じり合わせたかった…というわけでは無なかろうに」
「…ん。」
どちらともつかぬ返事で庭先をぼうっと見ている望美。
焦点の合わない瞳に落ちる影と、雨のせいかしんなりとした衣を纏う望美はいつもより更に艶やかに見えた。
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