小説

□『恋をする』
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「俺は、俺だけは、解っているよ。覚えているよ。お前が誰より、愛していたということを」


家から学校へ行く途中の道路で彼は俺にそう言った。
それで少しは救われた気になったが、だからと言って今更どうにかなるわけじゃない。

ぽつぽつと雨が空から落ちてくるのにも関わらず、俺はそこに立ち続けていた。これから冬になる、肌寒い空気の中で、一人、立ち続けていた。





『恋をする』

鏡を見て、自分の格好を確認する。いつもと同じ制服姿だが、それも悪くない。
髪型、ネクタイの結び具合など変なトコが無いかをチェック。

よし、今日も俺は元気だ。張り切っていくぞッ

そう気合いを入れながら、時間を見て慌てた。
早く出なければ彼に会えない。
学校へ行くには早い時間だが、二ヵ月前の入学式から毎日、この時間に家を出ている。
そうすれば、好きな人に会えるからだ。


俺は、そう。恋をしている。
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