Novel

□未完成
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聞こえてくる曲は私の気持ちを代弁していた。
私はイヤホンを耳から外しながら、聞こえるはずだった歌詞の日本語訳を口ずさむ。
『堕ちていく、堕ちていく、堕ちていく。』
まるで私の心そのままの歌詞。
何気なく視線を左に向けたら車が車道を走っていて、それに対して叫びたくなるが我慢する。
いくらなんでも精神病練に閉じ込められたくは無い。
お願い、臆病な私を轢き殺して下さい――なんて言ったら流石にアウトだろう事は馬鹿な私にも分かる。

そんな事を考えながら沢山の人とすれ違う。
その度に私は考え、想像する。
肉を刃物が切り分ける感触を。
誰も彼もが私をナイフで斬り殺し刺し殺す姿と、私が誰も彼もにする姿。

上を見上げればビルの屋上。
そこから花瓶か何かを落とせば人は死ぬ。
そこから落ちれば私は死ぬ。

死はテレビの向こうなんて遠くには無い。
わざわざお正月にドクロを持って街を歩く事も無い。
わざわざ生の実感を欲する程に死が遠いと人は言う。
誰かの死や誰かとの殺し合いに異常性愛を始めとした異常―とされる、或は決め付けられる―行為に頼らなくともこんなにも死は近い。
近すぎて疲れてしまう。
それとも憑かれて人に害を為してしまうのだろうか?
何にしても平和ボケなんて嘘だ。
近すぎて疲れて、目を背けているのだ。
でなければなんでこんなに世界は灰色なのか?

虚無感と人は言う。
だがそれも嘘だ。
無は空である。ならば疲れや空しさが有るならば色である。

何故安易に走り冒涜するのだろう?
3.14を3にするのと何が違うのか?
力不足と役不足の混合にもそれは似ている。

混沌は混濁ではないし混乱でもない。
混じり物と言うより、全ての母と言うのがカオスのニュアンスなのだから。

無とは空どれでも無い全ての元、どれでも在るの反対だから全ての父とでもしようか?
何にせよ滅びに回帰したいモノなんて虚無には遠い。
滅びに抗うのも言語道断。
無為であることこそ無なのだ。
それは何も滅ぼさない。
そして混沌は何もかもを新生するのみだ。

そういう意味でとあるドラまた女魔導師が主人公の作品には好感が持てる。
等と偉そうな事を考え私は歩く

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